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KAZUYUKI TSUKAMOTO



「お笑いより街を歩くほうが、おもしろい」



塚本和行(b.1984-)は、言葉を発することは少ないが、代わりに絵画作品に想いをのせているのだろう。一つの具象的なモチーフを、カラフルに羅列させて画面を埋め尽くす。毎日、淡々と数をこなしているようにも見える一方で、モチーフのひとつひとつや完成した作品全体には「おかしさ」がただよっている。「おかしい」には、滑稽な「可笑しい」や、訝(いぶか)しげな「可怪しい」などいくつかの意味がある。塚本の作品は、そのどちらも感じさせる。作品が生まれる過程と、寡黙な彼の胸のうちに迫りたい。


It Is More Interesting for Me
to Take a Walk Than to Watch a Comedy Show on TV



Kazuyuki Tsukamoto (b.1984-) rarely speaks with words; he puts his thoughts into his paintings instead. Colorfully arranged, concrete motifs fill his works. While it seems that he draws a lot in an impassive way every day, each motif and each finished work are okashii. Okashii has several meanings in Japanese, such as humorous or funny and mysterious or strange. Tsukamoto’s work makes us feel both these emotions. We would like to get closer to his process of creation and his heart.

Artwork

リンゴくんのまちがいさがし
2021 ペン、色鉛筆/紙 515×728 mm
Mr Apple’s Spot the Difference
2021 pen and colored pencil on paper 20.2×28.6 inch


かげサムライのきりあい
2022 ペン、色鉛筆/キャンバス 227×227 mm
Sward Fighting of Shadow Samurai 
2022 pen and colored pencil on canvas 8.9×8.9 inch


まちがいさがし621ぴきのくまからサングラスをかけていないくまをさがしてね
2019 ペン、鉛筆、色鉛筆/紙 342×500 mm
Spot the Difference - Search for a Bear Without Sunglasses out of 621 Bears
2019 pen, pencil and colored pencil on paper  13.4×19.6 inch


クマや花、コーヒーカップといった具象的なモチーフを、一つの画面いっぱいに何十、何百個も描き連ねる。一つ一つは色鉛筆でカラフルに塗られ、かわいらしく感じる。一方で、細部をよく見ると、花に牙が生えていたり、りんごがサングラスをかけていたりと、シニカルなものも多い。また、それと並行して、数字やりんごをキャラクターに仕立て、物語性のある作品も描いている。何気ない日常をおもしろおかしく、自分自身を楽しませるために画面に向かっているようにも見える。
Dozens or hundreds of concrete motifs, such as bears, flowers, and wine glasses, are drawn on every artwork. Each one is colorfully painted with colored pencils, and you can feel the cuteness. However, when looking closely at the details, there are many cynical motifs, such as flowers with fangs and apples wearing sunglasses. At the same time, he also draws narrative works by transforming numbers and apples into characters. It seems that he draws his artwork to entertain himself and to make his ordinary, daily life humorous.


Tsukamoto always finds fun in ordinary, daily life, and draws that into his artwork. There is Okashisa in which complex emotions, such as humorous fun, mystery, and beauty, have sadness in them, and they attract us. Tsukamoto's new works will be exhibited at Art Fair Tokyo 2022. Some of artworks on this page are available. If you are interested, please contact us at info@g-incurve.jp.

Interview

聞き手:ギャラリー インカーブ| 京都 スタッフ
2022年3月|アトリエ インカーブにて

Contents


ありふれたものに込める「おかしさ」

塚本は、ありふれた日用品や食べもの、生きものに、ひとひねりを加えてモチーフにする。
それは即興的なギャグとも、品格を感じさせるユーモアとも言い切れず、
滑稽で風変わりで、哀愁さえ含む、日本語で言うところの「おかしさ」ではないだろうか。
さらに塚本は、これらのモチーフを、画面いっぱいに大量に描き連ねる。
そもそも、なぜ同じモチーフを描き連ねているのか。作品は塚本にとってどのような存在なのか。

コーヒーくん
2021 ペン、色鉛筆/紙 382×540 mm
Mr. Coffee
2021 pen and colored pencil on paper 15×21.2 inch


スタッフ(以下太字):塚本さんの作品は、どこかクスッと笑ってしまうような「おかしさ」を感じます。それは意図的に出そうとされているのですか。

------ 塚本(以下細字):はい。まずは自分が楽しめるように。あと、みている人にも楽しんでみてもらいたいから。

お笑いとかも好きですか。

------ いえ、お笑いには興味がありません。好きな芸人さんもいません。

しょっくパート2
2004 ペン、パステル/紙 300×202 mm
The Shock Part 2
2004 pen and pastel on paper 11.8×7.9 inch


大わらいしてるおんなの人
2004 ペン/紙 187×281 mm
Loud Laughing Lady
2004 pen on paper 7.3×11 inch


ピストル
2008 墨/和紙 343×350 mm
Pistol
2008 indian ink on japanese paper 13.5×13.7 inch




そうなんですね。では、塚本さんが生活の中でおもしろいなと思うのはどんなことですか。それを作品にしようと思うこともありますか。

------ 街を歩いているときとか、おもしろいことがあったら覚えています。
でも、すぐには描きません。しばらく経っても、おもしろいと思ったものを描きます。


ここ数年、1つの画面の中に同じモチーフが、繰り返し描かれていますね。

------ 何度も描いて、うまくなったらなと。
ただ、うまく描きたい。それと、やっているうちにきれいに描けたらとも思います。


「うまく」と「きれいに」はどう違うのでしょうか。

------ うまくは、顔や建物などの「線」をうまく描けたら。きれいは、「色」をもっときれいに塗れたら、という意味です。



「見本」と本作品

塚本の作品には、本作品とは別に、塚本自身が「見本」と呼ぶ下絵のような作品が存在する。
単なる下絵とも言い切れない「見本」は、塚本にとってはどのような意味をもっているのだろうか。





本作品


見本

下絵としての「見本」は、本作品を「うまく・きれいに」完成させるための必要なプロセスなんですね。

------ そうですね。ペンが滲まないかたしかめたり、一列にモチーフがいくつおさまるか、番号をつけながら確認したりもします。


これまでは一旦「見本」を仕上げてから、本作品に取りかかっていましたよね。最近は「見本」にモチーフを一つ描いた後、すぐに本作品にも一つ描くというように、交互に同時進行しているようですが、「見本」の役割が変化しているのでしょうか。

------ 交互に描いていく方が間違えないかなと思って、そうなっていきました。


「見本」と本作品、同じものを二つ仕上げるとなると、描くモチーフの数も相当なものですよね。

------ はい。最初は楽しいのですが、描き出したらいつも後悔します。
完成までに時間がかかりすぎてしまうので。いつも半分まできたら、しんどくなります。だから最後のほうは大きくなりがちです。


それでも、二つの画面に同じモチーフを繰り返し描くんですね。

------ 完成したときが、一番うれしいからです。画用紙がやっと埋まった、解放されたという達成感があります。完成するまでは、いつも、早く終わらないかなと思ってしまいますが。でもやっぱり、繰り返して描くのが楽しいから、また次も同じように描きます。





チョコレートスティック
2011 ペン、色鉛筆/紙 192×149 mm
Chocolate Sticks
2011 pen and colored pencil on paper 7×5.8 inch


塚本が、たとえばタバコを吸う花をひらめき、そこにおかしさを見出したとする。一つ描けば気持ちは満たされるのではないかと思うが、塚本は画面を埋め尽くすほど大量に描く。繰り返し描く理由は、うまく、きれいに描きたいから。何度も描いて作品の精度を上げ、同時に何度もおかしさをかみしめているのか。塚本の真意を掴もうとすると、いつも指の間からすり抜ける。

旅をするキャラクターたち

さまざまな身近なモチーフを描く塚本だが、中でも、数字とりんごを擬人化した「すうじくん」と「りんごくん」は度々登場する。
すうじくんは、1から10までの数字に足が生えた塚本のオリジナルのキャラクターで、いつも集団で生活をしているようだ。
りんごくんも、たくさん集まって宇宙旅行やピクニックに出かけたりする。
どちらも「見本」と本作品に大量に登場することもあれば、「家さがし」「山のぼり」など物語を伴って、情景と共に描かれたものもある。
これらの作品に、モチーフを描き連ねるのとはまた違った想いを、塚本は抱いているようだ。

「りんごくん」シリーズ

数あるモチーフでもとくに「すうじくん」「りんごくん」は頻繁に登場し、それぞれの世界観を築いています。どんな物語になっているのでしょうか。

------ 「すうじくん」は迷子で家を探しています。
でも、何で探しているのかはわかりません。迷子だからといって悲しんではいませんが、わりと急ぎで家を探しています。みんな、さまよっています。どこへ行ったらいいのかと。
りんごくんは、集団でいろんなところを旅しています。ショッピングに行ったり、宇宙旅行に出かけたり。その旅はこれからも続きます。


「すうじくん」や「りんごくん」は、塚本さん自身の心境とリンクする部分はあるのでしょうか。

------ (しばらく沈黙の後)はい。自分の作品の中では一番反映されていると思います。

「すうじくん」シリーズを眺める塚本


「すうじくん」たちキャラクターがいろんな場面に登場するようになったきっかけはありますか。

------ 昔、展覧会で数字をモチーフにした作品をお客さんが楽しそうにみてくれたからです。
また楽しんでもらいたいなと思って、次の作品を描いているうちに、自然とシリーズのようになりました。


これからどんなひとに作品をみてほしいですか。

------ どちらかというと、大人よりもこどもにみてほしいです。ぼくも楽しんで描いてるので、みている人も楽しんでほしい。


1-10までのすうじくん
2014 ペン、色鉛筆/紙 512×345 mm
Mr. Numbers from 1 to 10
2014 pen and colored pencil on paper 20.1×13.5 inch


りんごくんのショッピング
2018 ペン、色鉛筆/紙 362×518 mm
Mr. Apples’s Shopping
2018 pen and colored pencil on paper 14.2×20.3 inch


最後に作品について伝えたいことはありますか。

------ みるひとの想像にお任せします。リンゴくんシリーズとすうじくんシリーズは、今後も制作予定です。楽しみにしておいてください。


ありふれた日常に楽しみを見出そうとする塚本は、「すうじくん」や「りんごくん」の旅に自分を投影している。すうじくんは居心地のよい場所を求めてさまよい、旅に出かけるりんごくんは心躍らせているようだ。これらの作品は、「可笑しさ」や「可怪しさ」の先にある、塚本の願望ともいえる想いが込められているのだろうか。 「おかしい」は、平安時代の『枕草子』や『源氏物語』にも記された「をかし」に辿りつきもする。「もののあはれ」とともに、風情や趣深さといった、日本古来の美的理念をも包含する「おかしさ」。塚本の作品と本人の佇まいからは、滑稽な面白さや怪しさ、悲しみをまとった美しさといった、複雑な感覚が絡みあう「おかしさ」が漂い、ひとを惹きつけている。



Biography

塚本 和行

1984年生まれ。コーヒーカップや花といった具象的なモチーフを、色鉛筆でカラフルに画面いっぱいに描き連ねる。それと並行して、数字やりんごをキャラクターに仕立て、物語性のある作品も描いている。何気ない日常をおもしろおかしく、自分自身を楽しませるために画面に向かっているようにも見える。展覧会や広告のメインビジュアルに採用されるなど、キャッチーな作品群が人々の心を掴む。

主な展覧会 ・ アートフェア

アートフェア東京(2019)、ギャラリー インカーブ|京都(2019, 2017, 2015, 2011)、ギャラリーアセンス美術(大阪・2013, 2011, 2009)、浜松市美術館(静岡・2010)、丸の内ハウス(東京・2010)。

Kazuyuki Tsukamoto

Born in 1984, Kazuyuki Tsukamoto draws dozens or hundreds of concrete motifs such as coffee cups or flowers with colored pencils. At the same time, he also draws narrative works by transforming numbers and apples into characters. It seems that he draws his artwork to entertain himself and to make his ordinary, daily life humorous. His catchy pieces captures the hearts of people, have been used as main visuals of exhibitions or advertisements.

Exhibitions・Art Fairs

ART FAIR TOKYO(2019), gallery incurve kyoto(2019, 2017, 2015, 2011), Gallery Athens(Osaka, 2013, 2011, 2009), Hamamatsu Municipal Museum(Shizuoka, 2010), (marunouchi)House(Tokyo, 2010)





OIL

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